小峰書店から2022年3月に刊行されたYA小説、『サムデイ』(デイヴィッド・レヴィサン著)について翻訳家の三辺律子さんにうかがいます。
日本YA作家クラブ会員インタビュー第6弾は、会員さんへのアンケートとメールのやりとりをもとに、世話人の梨屋アリエが報告します。最新のYA作品や、みんなが知っているYA作品、YA層に読んで欲しい作品、その他、会員さんの情報としてYA作品以外の本の情報も、発信していきます。掲載順は、会員さんのお仕事のご都合に合わせて。更新は不定期になります。どうぞよろしくお願いします~。
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三辺律子さんにインタビュー!!
三辺律子さんは、ひと癖もふた癖もあるユニークな児童文学の翻訳で印象深い一方、心に染みる絵本やYA作品もたくさん翻訳されています。映画『Love,サイモン17歳の告白』の原書となる『サイモン vs 人類平等化計画』(ベッキー・アルバータリ著 岩波書店)や、映画『イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所』の原書となる『ミアの選択』(ゲイル・フォアマン著 小学館)のように映像化しているYA作品やグラフィックノベル『THIS ONE SUMMER』(マリコ・タマキ著 岩波書店)などの翻訳も手がける人気の翻訳家さんです。
『サムデイ』のおおよその対象年齢は?。
(三辺さん)中学生~大人です。
(梨屋)一言でいうと、どんな本ですか?
(三辺さん)翻弄される本です。
(梨屋)わ、本当に一言で言っていただいたので、補足します。2018年刊行のデイヴィッド・レヴィサン著『エヴリデイ』という本の続編ということでよろしいですか。『エヴリデイ』を読んだらとても面白くて、続編があると聞いて日本で翻訳されるのをとても楽しみにしていたんです。 『エヴリデイ』というタイトルを見たとき、素っ気ない気がしたのですが、読んだらぴったりと感じました。『サムデイ』というタイトルは、未来に向かっている感じがしますね。タイトルはどのようにして決まりましたか?
(三辺さん)わたしはもともと、〈原書のタイトルそのままが好き派〉なのですが、実際はなかなかそうはいかないことが多いです。既に似たようなタイトルがあったり、作品の内容がわかりにくかったり、営業的に(?)あまり魅力的じゃなかったり。
でも、今回は原書のタイトルそのままです! 気に入っていますが、SNSで感想などを検索しにくい(関係ないものが大量にヒットしてしまうから)のだけが悩みかも。
(梨屋)あ、確かに、検索しにくそうです。三辺さんは毎年たくさんの本を翻訳されていてお忙しいと思うのですが、ご自身の訳された本の感想や評判を気にされることがあるのですか?
(三辺さん)もちろん気になります! とはいえ、ツィッターなどで検索するのは、もちろん感想を読みたいのもあるのですが、あと、RTなどしてなるべく多くの人の目に触れるようにしたいなって思うからでもあります。自分でも、SNSで「あ、こんな本出てたんだ、読みたい!」と気づくことは多いし、何度か目にするうちに読みたいという気持ちが盛り上がる(洗脳される笑)こともあるので。訳している本はどれも自分ではめちゃめちゃおもしろい!と思っている作品なので、できるだけたくさんの人に読んでほしいなあと。
(梨屋) 続編が出たことで、読者のかたに伝えておきたいことはございますか?
(三辺さん)『エヴリデイ』と『サムデイ』は両方、あとがきがありません。
ラストにいろんな感じ方があるだろうなと思って、それを邪魔したくなくて。
それに、ラストを読んでからいろいろ考えているうちに、読後感が変化していく本だという気もするのです。そんなところも楽しんでいただければ!
装丁について
(三辺さん)一冊目の『エヴリデイ』のとき、装丁は、川名潤さんにお願いしたいなと思っていました。
ちょうどBOOKMARKという金原瑞人さん、オザワミカさん、わたしで作っているフリーペーパーの「装丁特集」で川名さんにお世話になったばかりで、すっかり装丁の魅力に取りつかれていたので。そうしたら、編集者の方から、まさに「川名さんにお願いしませんか?」というご提案が!
川名さんが、星野ちいこさんにイラストをお願いしようと決めて下さり、星野さんがなんと42人の登場人物たちの顔を描いてくださいました。それを川名さんが切り貼り(でいいのかな?)してくださって、『エヴリデイ』の表紙が完成。ジャケ買いしてくださった方も多かったと思います。
というわけで、続編にあたる『サムデイ』も、川名潤さん&星野ちいこさんにお願いしました。今度は30人分だったから、すこしは楽だった……はずないですね。
またすてきな表紙になって、とてもうれしいです。
(梨屋)表紙買いしてしまいますね! 以前、『エヴリデイ』をYA*cafeという読書会のテーマ本にしたとき、話しやすくするために登場人物名と特徴を全員書き出してみたのです。そのレジュメと比べながら表紙を眺めていたら、どれがだれなのか全部当てはめることができたので、驚きました。人がたくさんいるからなんとなくいろんな顔を描いたのかと思っていたんです。実際はイラストレーターさんが登場人物全員を描き分けていたんだって。えーっと思って原著の表紙をwebで調べたら、英語版は全然表紙が違うから、またえーっとびっくりしました。このすごくおしゃれな表紙、日本版だけなんですね。
『エヴリデイ』は作者のアイデアがすごい。現代の米国の家族や若者の姿もさりげなく見せてくれています。実は、映画もすぐに見ました。でも、映像にすると作品の肝心の部分が伝わりにくくなっていました。絶対に文字で読むためのストーリーなので、本好きさんにはぜひ小説で読んでもらいたい。
発売されたばかりの続編『サムデイ』も、Somedayでなく近いうちに入手したいと思います。
出版社のサイト
https://www.komineshoten.co.jp/search/info.php?isbn=9784338287258
三辺律子さんProfile
東京都在住。
翻訳家。
twitter @RitsukoSH @bookmarkFB
執筆以外の最近の活動や関心ごとを一言おねがいします
(三辺さん)食べること。
(梨屋)食べること……と、いいますと?
(三辺さん)もともと料理は好きなのですが、コロナで外出の機会も減って、ますます料理&食べることに執着するようになってしまいました……。ネットでいろんな食材を取り寄せて、作ってみたりしています。最近のヒットは、鳩の丸焼き、鴨の丸焼き、馬肉のカルパッチョかな(肉ばっかり)。
その他の近刊(翻訳)
2022年3月『マンチキンの夏』 (ホリー・ゴールドバーグ・スローン著 小学館)
2021年10月『タフィー』 (サラ・クロッサン著 岩波書店STAMP BOOKS)
『わたしのあくび みなかった?』(ピョン・ユジョン著 絵本塾出版)
三辺律子さん、ご協力ありがとうございました!
三辺律子さんには、「日本YA作家クラブ ニューズレター 第2号」の「作家・翻訳家のお気に入り調査隊」コーナーにご登場いただきました。
日本YA作家クラブでは年に二回、図書館や学校図書館、読書推進活動をしている団体様向けに、ニューズレターを発行しています。ニューズレターについての情報は、公式サイトを御覧ください。下の図からリンクしています。
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