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インタビュー 小説家の那須田淳さん 『黄色い星・ユダヤ人を守った国王とデンマークの人たち』をきっかけに考えてみたい第二次世界大戦のこと+猫s

BL出版から2021年10月に刊行された絵本『黄色い星・ユダヤ人を守った国王とデンマークの人たち』(カーメン・アグラ・ディーディ作,ヘンリー・ソレンセン絵)を翻訳された、小説家の那須田淳さんにうかがいます。


書影

 
日本YA作家クラブ 会員インタビュー 第6弾は、会員さんへのアンケートとメールのやりとりをもとに、世話人の梨屋アリエが報告します。最新のYA作品や、みんなが知っているYA作品、YA層に読んで欲しい作品、その他、会員さんの情報としてYA作品以外の本の情報も、発信していきます。掲載順は、会員さんのお仕事のご都合に合わせて、決めていきます。更新は不定期になります。どうぞよろしくお願いします~。
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那須田淳さんにインタビュー

  

那須田淳さんは『ペーターという名のオオカミ』(小峰書店)で第51回産経児童出版文化賞、第20回坪田譲治文学賞を受賞。日本とドイツを移動しながら小説を書くほかに翻訳もされていて、会員制同人誌『鬼ヶ島通信』編集長をされているマルチプレイヤー!


『黄色い星・ユダヤ人を守った国王とデンマークの人たち』を一言でいうと、どんな絵本ですか?


(那須田さん)ナチス時代に、国のユダヤ人たちを守ろうとしたデンマーク王の伝説をベースに人々が非人道的な差別とどう向き合ったのかを描いたものです。


(梨屋)絵本の体裁ですが、おおよその対象年齢はどのくらいを想定していますか?


(那須田さん)8歳~一般です。 できれば中学生ぐらいに読んでもらいたい。


(梨屋)この本を翻訳したきっかけは?


(那須田さん)2021年度が、日本が太平洋戦争をはじめて80周年にあたり、自分自身にとって、あらためて1939年から始まった第二次世界大戦のことを考えてみたいと思ったから。

ぜひこの絵本を通して、戦争のみならず人種やLGBTQなどの差別問題や、貧困や経済格差、さらには環境問題を含めて、YA世代に、今、起きている現在の社会問題もみつめて欲しい。同時に、なぜ欧米で、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが注目され、若い世代を中心に影響を持っているのかなどを意識し、日本のYA世代にも、自分たちの目前の未来としてもっと政治にも関心を持ってもらいたいとも考えた。


黒ずんだ子どもの靴の山
「アウシュビッツで殺された子どもたちの靴」

アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所のモニュメント
アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所の終着点 この先がガス室






















原書について教えてください。


(那須田さん)ナチスの占領下のヨーロッパではユダヤ人は迫害され、戦後まで生き延びることができたのは三分の一に過ぎなかったのだけれど、この絵本の主人公、デンマーク王クリスチャン10世のもとデンマークに暮らしていたユダヤ人はじつに98パーセントが生き延びることができた。それがどうして可能だったのか。本書はすべてをあきらかにしているわけではない。ただ考えるきっかけを与えてくれていると思う。


(梨屋)那須田さんにはドイツ語のイメージがあります。でも、デンマークが舞台のお話……。書誌情報をみると、この本は米国で出版された本で、作者は元キューバ難民なのですね? 原書は何語で書かれているのですか?


(那須田さん)もとは英語でした。ディーティさんは今もアメリカに在住です。あくまで僕の推測ですが、ご本人も難民として苦労されたのでは。ナチス時代のユダヤ人差別だけでなく、世界では今も人種差別・性差別などがありますよね、この作品はその点も含めて、彼女自身の体験も背景に、現代の僕たちに問いかけているのだと思います。

 なお、この絵本は、20年ぐらい前に刊行されたものですが、2001年にはボーロニアの児童図書展でボローニアラガツィ賞をノンフィクション部門で受賞されています。


(梨屋)この本に関連したイベントはございますか?


(那須田さん)2022年1月22日にJBBY 日本国際児童図書評議会のイベントで翻訳フォーラム「子どもの本・日本と世界~視野の違いを探る」にパネリストの一人として参加します。

ほかにも翻訳家のさくまゆみこさんの進行で、作家の佐藤まどかさん、翻訳家の宇野和美さん、こだまともこさんも登壇されます。


本の情報のサイト(絵本ナビ)


著者


那須田淳さんProfile


静岡県浜松市生まれ

現在は、ドイツのベルリン市と東京に暮らす。

小説家。


www.aokumaradio.com  (Official site)



(下の写真 左「ベルリンの我が家の近所」 右「仕事場」)


執筆以外の最近の活動や関心ごとを一言おねがいします。


(那須田さん)コロナ禍の先にどんな時代になるか。  また日本の作家の作品をどうやってもっと海外に紹介できるか。  おいしい珈琲の淹れ方も気になっている。


(下の写真 那須田家の猫様)


(梨屋)写真の猫様の名前は? どちらで飼っているのですか?


(那須田さん) 東京の家(僕は年に半分半分でドイツと東京で暮らしているので)で飼っている猫です。

 僕の実家近くで同じときに生まれた野良猫の兄妹猫(姉弟かもしれませんが)で、親の野良は子猫のときから実家に出入りしていたので、生まれてすらすぐ動けるようになって親に連れられてきていたので、僕が子猫を引き取ることに。親ともう一匹の子猫は実家に暮らしています。大きいほうはトラ猫のオスで名前は「乱歩(Ranpo)」。下の三毛はメスで「遊(YUU)」です。今、2019年の4月生まれです。


(梨屋)最後にもう一つ、那須田さんに質問があります。

 ドイツ語や外国語を覚えたきっかけはなんですか?


(那須田さん)僕は語学はさほど得意ではありません。今でも英語もドイツ語も語学力でいうとほんとうに大したことはないです。ただ、言葉は人間がコミニュケーションの道具として使っているものなので、なんとか意思疎通はできるかと思っています。また僕の連れ合いは語学が堪能なので、翻訳でわからないときは確かめるようにしています。ただ外国志向はもともと強かったのは確かです。大学卒業後に映画の脚本を英語で書きたくてイギリスに半年ほど語学留学し、お金が続かなくて戻ってきたことがあります(笑)。その後、作家になってドイツのバイエルンの森を舞台にしたファンタジー「ボルピィ物語」を出し、それが縁でミュンヘン国際児童図書館に作家として奨学研究員で招かれ、ドイツ人作家ミヒャエル・エンデと何度かお話しさせてもらったことがあります。そのときに、作家なら住む場所はどこでもよいのではとアドバイスを受けたんですね。エンデにしても、『モモ』を書いたときローマで暮らしていてそのときの経験があの作品の土台になったそうで、作家のタイプにもよると思うけれど、生活そのものが取材にもなるといわれて、確かになあと思い立ったわけです。ドイツに研究員で来るまえに住んでいた日本の賃貸マンションは引き払っていたので、じゃあつぎの新居はドイツでもよいかなあと。ミーハーだし、小説としてはアメリカ文学やフランスのスタンダールが好きなので、本当はパリにも住んでみたかったのですが、フランス語はまったくわからないし、知り合いもいなかったので、知人がいたドイツに。アメリカはビザが厳しいので候補にはなりませんでした。ドイツ語はそのときに初級から勉強し、2年ぐらいかけて大学受験資格を取るぐらいまでにはなりました。ただドイツ語を意識すると、日本語がどうもおかしくなることに気づき、僕はドイツでももっぱら日本語で暮らすようにしています。


その他の近刊

2021年1月『おはなしSDGs  未来からの伝言 SDGsガイドブック』 (講談社)

2020年7月 リンドグレーン原著『長くつ下のピッピ (10歳までに読みたい世界名作)』那須田淳編集, 翻訳(学研プラス)

20203月『波乱に満ちておもしろい! ストーリーで楽しむ伝記 (1) 空海』(岩崎書店)



那須田淳さん ご協力ありがとうございました。



レター

日本YA作家クラブでは年に二回、図書館や学校図書館、読書推進活動をしている団体様向けに、ニューズレターを発行しています。




ニューズレターについての情報は、公式サイトを御覧ください。下の図からリンクしています。



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