国土社から2021年11月に刊行された児童文学『飛べ! 遺伝子を超えて』について作者の森川成美さんにうかがいます。
日本YA作家クラブ 会員インタビュー 第6弾は、会員さんへのアンケートとメールのやりとりをもとに、世話人の梨屋アリエが報告します。最新のYA作品や、みんなが知っているYA作品、YA層に読んで欲しい作品、その他、会員さんの情報としてYA作品以外の本の情報も、発信していきます。掲載順は、会員さんのお仕事のご都合に合わせて、決めていきます。更新は不定期になります。どうぞよろしくお願いします~。
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森川成美さんにインタビュー
森川成美さんは「アサギをよぶ声」シリーズでおなじみのファンタジーの作家……と思っていたら、日系二世の少年を描いた『マレスケの虹』で第43回日本児童文芸家協会賞を受賞作し、講談社の「おはなしSDGs」シリーズでは『夢の発電って、なんだろう?』という本も書かれています。執筆ジャンルもグレードも多彩で、多才!
『飛べ! 遺伝子を超えて』というタイトルは、とてもインパクトがありますね。
(梨屋)理科やスポーツに関する児童文学なのかなと思って読んだらそうではなかったので、読んだ後に改めて見直して、面白いタイトルだなあと思いました。どのように決められたのでしょうか?
(森川さん)私は最初は「飛べ! 遺伝子を載せて」としていましたが、編集者さんがこれは「載せて」ではなく「超えて」だわよねとおっしゃって、それで一応、仮題として「飛べ! 遺伝子を超えて」ということにしていました。でも、編集者さんは迷っておられて、画家さんに頼むときに、タイトルはあくまで仮で変更になるかもしれませんと言って依頼されたそうですが、画家さんがゲラを読まれて、とても意味のあるタイトルだと思うとおっしゃって、DNAをあしらったこのカバー絵を1つの案として描かれてきたそうです。その絵がとてもよいので使いたいということになり、このタイトルが決定しました。
(梨屋)いつもはどのようにタイトルをつけていますか?
(森川さん)私はタイトルはあまり得意でないのか、編集者さんが付け直されることが多いです。
(梨屋)主人公は小学六年生の女の子ですね。この本のおおよその対象年齢はどのくらいですか。
(森川さん)小学校高学年からです。
(梨屋)挿絵が入っているので、小学生は読みやすいですね。一言でいうと、どんな本でしょうか?
(森川さん)親の束縛を自覚し、そこから逃れることを肯定する子どもたちを描いた本です。
この本の執筆のきっかけは?
(森川さん)私は厳しい親に育てられ、引かれたレールの上をやみくもに走らされました。でも、結局はその通りにはいかず、予定外の人生を歩んできました。自分の子どもには自由にさせたいと思い、画期的な子育てをしていたつもりですが、育てあげてみると、それも束縛だったことに気づきました。そういう二つのタイプの親を、二人の母という形で描きたいと思いました。実は、自分の中にもその両者があって、常にせめぎあっていましたので、この心情は一人の親の中に同時に存在することもある普遍的なものだろうと思います。そして子どもたちに大事なのは、親は子を愛しているが万能ではなく、人はみな自分なりの道を踏み出していい、という肯定感だと思い、それをこの物語から受けとってもらいたいと思いました。
(梨屋)この本に登場する女の子のように、森川さんご自身は子どものころにテレビを制限されていたのでしょうか?
(森川さん)父が厳しくて、テレビ、マンガは基本的に禁止という家でした。マンガは持っているのを見つかると叱られるので、怖くて買えませんでした。高校生になってからは、当時評判の例えば『ベルサイユのばら』などは友だちに貸本屋で借りてきてもらって、家に持って帰らずに学校で読み、友だちに返してもらいました(友だちは自分も読めるのでやってくれました)。
(梨屋)え~! それは今ではなかなかない体験かも……。森川さんの人生と、子育ての経験が反映された作品なのですね。子どもの読者と大人の読者で、本の感想を話してみたら面白そうです。これから中学受験する予定の子が読んだらどんな感想を持つのか、反応が楽しみですね。
出版社による本の情報サイト
執筆以外の最近の活動や関心ごとを一言おねがいします。
(森川さん)中学生のころSFが好きでアイザック・アシモフの『銀河帝国の興亡』にはまっていました。それが最近実写ドラマ化されてApple TVで配信放映されるようになったので、毎回楽しみに見ています。だいぶ内容を忘れていたので、本のほうも読みなおしています。
(梨屋)ところで、森川さんのことをずっと「ナルミさん」だと思っていました。シゲミさんとお読みするのですね。大変失礼しました。読み間違えられることがあると思うのですが、ご本名ですか?
(森川さん)本名です。音を覚えてくれた方には「茂美」と書かれることが多く、字を覚えてくれた方には「ナルミ」と読まれることが多いです。いずれにしてもまちがえられることになり、直すのがめんどうで、子どものころから、一発で読んだり書いたりできる名前にあこがれていました。なのにペンネームにしなかったのは、本名はこれこれでペンネームはこれこれですと、さらに説明することになるのがめんどうだったからです。
(梨屋)説明……確かに(笑)。
森川成美さんProfile
大分市出身 東京都在住。
児童文学作家。
その他の近刊
8月『岬のマヨイガ 映画ノベライズ』 (講談社青い鳥文庫)
6月『闇に光る妖魔 アサギのよぶ声』(偕成社)
5月『はなの街オペラ』 (くもん出版)
森川成美さん ご協力ありがとうございました。
日本YA作家クラブでは年に二回、図書館や学校図書館、読書推進活動をしている団体様向けに、ニューズレターを発行しています。ニューズレターについての情報は、公式サイトを御覧ください。下の図からリンクしています。
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